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ドンヒョクのPDAより;7 「300本のバラ I」

朝目を覚まして、僕はあなたのことを考えていた。そして僕たちがどうやって出会ったかを。

僕がここに来てから、まだ数日しかたってはいなかったが、ずっと前からあなたを知っていたような気が僕はしていた。僕にとってはあなたの笑顔はもうすっかり親しいものになっていた。

あなたが僕に微笑みかけるたび、僕はあなたにこう言われているような気がした__「ドンヒョクさん、私がここにいるわ、きっと何もかもうまくいくわ」

カルグクスを食べることがこんなにも啓示に満ちた体験になるなんて僕は今まで考えたこともなかったし、ましてマクドナルドで食事をすることが忘れられない出来事になるなんて、思ったこともなかった。そして昨日のあの雨__あなたをとても近くに感じたあのとき・・・

もしかしたら、僕は恋をしたのだろうか・・・そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない・・・僕には確信が持てなかった。

だが僕は「300本のバラ」のことを思い出した・・・はじめのルームサービスをあなたに贈ってから、けっこう時間がたってしまったな・・・僕はホテルのフラワーショップに行き、あなたに贈る300本のバラを注文した。

「フランク」

送り状にそう記し、ソ・ジニョン支配人に届けてくれるよう、僕は店に頼んだ。

前に僕があなたにルームサービスを贈ったとき、僕はあなたの名前さえ知らなかった。あれから僕たちはずいぶん長い道のりを辿ってここまで来たように思える。

今度のルームサービスに、あなたはどんな反応をするだろう?

僕はビリヤードルームに行き、ボールをセットして、自分の気持ちをはっきりさせようとビリヤードを始めた。

最初のショットで、ボールはいっせいにテーブルの上に散らばった。

次のショットで、僕は赤玉をポケットした。

僕が3回目のショットの狙いを定めているとき、昨日預けたコートを手にあなたが入って来た。

あなたがコートを返しに来たのは僕が考えていたよりも早かった。僕の行き場所をあなたが知っていたことは嬉しい驚きだった。

とは言え、昨晩以来、あなたがまた僕から距離を置いているような感じが僕はしていた。何かあなたの気に障るようなことを僕はしたのだろうか?

「お客様の居場所は常に把握しておくのが私の仕事ですから」とあなたはいつものように丁寧な口調で答えた。

お客様?

僕は4回目のショットを狙ったが、今度はポケットし損なった。

僕はあなたにビリヤードが好きかどうか尋ね、あなたはやり方もしらないと答えた。

5回目のショットも失敗だった。あなたがそばにいると、全然集中できないな・・・

だが6回目は、緑玉をポケットすることに成功した。

「時間を作ってください。教えてあげますよ」

あなたと一緒に過ごす時間が増えるかもしれないと思い、僕は微笑んだ。

すると、あなたはルームサービスのことを持ち出した。あなたがその話を持ち出してくれて僕はとても嬉しかった__気に入りましたか?

「ええ・・・でも、どうぞもう、そういうものは贈らないでください・・・オフィスは私一人で使っているわけではないので・・・ホテルのお客様から贈り物をいただくのは好ましいことではないんです」

僕は少しいらいらし始めた。

“そういうもの”ってどういうものだ? それに、同僚と同じオフィスだということと、僕のルームサービスとの間に何の関係がある? 僕のルームサービスの何がそんなにふさわしくないと?

スカーフは僕からあなたへの贈り物だった。今度のバラも同じことだ。それは僕とあなたの間のことであって、他の人間には関係ない。

いいだろう。オフィスで僕からのルームサービスを受け取るのがそんなにあなたを困らせるというなら、あなたのアパートに直接届けさせましょう。

だが、そういう意味ではないとあなたは言った。では本当は何が言いたいんだ? 何か他のことを伝えようとしている気はするが、言葉を選んだ結果、あなたが本当は何が言いたいのかが、僕には伝わらなかった。あなたが本当に言いたいことは何ですか?

「・・・でも・・・困ってしまうんです」

あなたがそう言った時、僕は次のショットを狙っているところだった。

僕はボールから目を離し、あなたに目をやった。さきほどからの僕の苛立ちはさらに募っていた。

“困ってしまう”というのは、どういう意味なんだ? あなたに近づきたいという僕の気持ちを感じてはいないのか?

「お客様が当ホテルにご滞在の間、最高のおもてなしをしたいと思っています。ですが、お客様の方にそうしていただくのは・・・」

あなたが僕を“お客様”と呼ぶのは今朝からこれで4度目だった。

あなたにとって僕はただの客でしかないのか?

「僕が客だから困るというなら、じゃあ、他のホテルに移りましょうか」

僕はぶっきらぼうな口調で言った。あなたの“お客様”でい続けることなどまっぴらだったからだ。

「いえ、そういう意味で言ったんじゃありません」あなたは謝り、言い直そうとした。

もう遅い。

僕の問いをはぐらかしたままでは行かせない。

「じゃあどんな意味だったのですか?」

「わかりません・・・」あなたはうつむいたまま、つぶやくように言った。

「何がわからないんですか?」僕はさらに問い詰めた。こういう訊き方では答えられないというのなら、選択肢をつけよう__「シン・ドンヒョクが贈った花の名前がバラなのか、ユリなのかがわからないということですか? それとも、僕がただの客なのか、新しく現れた男なのかがわからないのですか?」

これ以上あなたに僕の質問をはぐらかされるのはもうたくさんだった。僕は今すぐあなたの口から答えを聞きたかった。

僕の口調にあなたは息を呑み、落ち着かない様子になった。

「私・・・私、これで失礼します。バラ、ありがとうございました」

そう言うと、あなたは立ち去ろうとした。

では、あなたは僕の最初の質問には答えたわけだ__あれがバラの花だということはわかっているわけですね。

では一つ目の質問はもう終わりだ。二つ目の質問の答えは? あなたはまだ僕の質問に答えてはいない・・・

「ソ・ジニョン」

まだ行ってはだめだ・・・まだ僕の言いたいことが残っている。

あなたは、僕に背を向けたまま、足を止めた。

僕の言い方が不十分なせいで、あなたに僕の気持ちが伝わっていないのかもしれない。

僕からスカーフを受け取ってもあなたが何も感じないのなら、バラを受け取ってもなお僕の気持ちがわからないのなら、そして僕がこうやってあなたを問い詰めても、まだその理由がわからないというのなら、僕は自分の心のうちをすべてはっきりと言葉に変えて、僕の答えをあなたに教えよう。

「仕事でもゲームでも、僕は勝てる相手しか選んできませんでした。でも、今回は、結果がどうなるのかわかりません・・・本当にわからないんです。でも結果のことは今はどうでもいい・・・」あなたはようやく顔を僕の方に向けたが、あいかわらず僕に目を合わせはしなかった。だがそれももうどうでもよかった。

僕が言った言葉をあなたが理解したのかどうか、それすらも大したことではなかった。

僕が今あなたに伝えたかったことは一つだけだった。

「・・・もう、始まってしまったから」

そう僕は言った。

あなたは一瞬僕を見てから、急いで部屋を出ていった。僕はビリヤードのテーブルにもたれ、窓べに立って外を見ていた。

僕の言葉にあなたは困惑し、悩み、怯えていたようだった。うまく言えないが、ある意味、それでも僕は構わなかった。

すべてははっきりした__なぜ自分がここにやって来たのか、僕にとってあなたがどんな存在なのか、ようやく僕は理解した__僕はあなたに恋をしたのだ。

僕はあなたを動揺させてしまったのかもしれない。でも僕は、僕の気持ちをそのまま言う以外に自分の想いを表現する方法を知らなかった。

あなたはどう思うだろう? 僕にはわからなかったし、知りたいとも思わなかった。 

あなたを喜ばせたい、幸せにしたいと思う自分の強い気持ちが、僕の心の中に、変えようのないもの、隠しようのないものがあることを僕に教えていた。

僕はあなたを怖がらせてしまったのかもしれない。でも僕は怖がらせたかったわけじゃない。ただ僕が、シン・ドンヒョクが、ソ・ジニョンにむかって話していただけだ・・・

今やすべてが明らかになった。もう推測などいらない。ジニョンさん・・・それはもう、始まってしまったのだから。

From: Dong Xian’s PDA “Our game has begun...” by TT
Translator: silverblue
Coordinator : Milomomo

 

ジニョンの思い:7 「300本のバラ II」


私は接客前に、支配人室で化粧直しをしていた。イ支配人が私の容姿に文句を言っているとき・・・はいはい、あなたの肌はとっても綺麗で、唇はバラのようですよ。私には無いわ。満足ですか?

「ソ・ジニョンさんは・・・?」誰かが聞いた。

「はい、ここです。」私は答えた。

とても大きな赤いバラの花束が私の目の前に置かれた。

「ソ・ジニョンさんにです。」オモ・・・。イ支配人が「何本あるの?」と聞き、「300本です」と業者の人は答えた。

送り状にフランクとあった。私はとても大きなバラの花束を見て、ショックを受けた。これに反応するには、まだ打ちひしがれた気分だった。

イ支配人が私をからかい始めた。彼女の性格からいくと、この事はすぐにホテル内での噂になるわ。

そうじゃなくても、支配人がどうしてお客様からこんな贈り物を受け取れるの?

本来なら私達がお客様にサービスしなければいけないのに。お客様が私達に贈り物するなんて。

私は彼に話にいかなきゃ。でも、何て言おう・・・。どうやって話したら良いの?

私は綺麗に洗われた彼のコートを手にして、ドンヒョクさんを探し始めた。いいえ、お客様。

私は今日のホテル日誌を開けた。

「ここだわ!」私はコートを手に、ビリヤードルームに入っていった。

「今日は。」“ソ支配人”は挨拶をし、私は微笑んだ。

PDAやコートを手にしていない今日の彼は、どこか落ち着いた感じだった。とってもくつろいで、魅力的な感じだわ。

どうしてここが分かったかですって?どうしてそんな質問するんです?私はホテルの支配人で、彼は私のお客様ですよ。だからお客様の居場所はすぐに分かるんです。

私は言われる通り、彼のコートをソファーに置いた。そしてビリヤードテーブルに近づいた。彼はなれた手つきでビリヤードをしていた。

「ご一緒に如何ですか?」と彼は聞いた。

え?い、いいえ。私は首を振った。最後に玉突き棒を持ったのはいつだったかしら・・・?

「私できないんです」恥ずかしそうに答えた。そういえば、料理もできないし、水泳も、サイクリングも得意じゃないわ・・・。

ホテルの事以外では、何も知らないのね、私・・・。

「時間をつくってください。お教えしますよ。」と彼は微笑んだ。分かりましたと言って、私は頷いた。

彼は何でもできるのね。知らない事とか、できない事ってあるのかしら?

私はそこにしばらくたたずんだ。私はそこを離れるつもりは無かった。それは頭の中にある事を、まだ話していないからだ。

「あの・・・。」何て言ったら良いの?「あなたが送ってくださった花束。」

彼はボールに狙いを定めていた。

「2回目のルームサービスは如何でしたか?」ああ、ルームサービス?ええ、受け取ったわ。そして有難うございます。

「でも・・・」私は口ごもってしまった。

「あの・・・、出来れば支配人室にこのような贈り物をしないで頂きたいのですが・・・。他のスタッフもいますし、お客様から贈り物を頂くのは好ましくないんです。」

私は思い切って気持ちを打ち明けた。

ボールが衝突した音で、私はびっくりした。贈り物を自宅に?3回目のルームサービス? い、いいえ。そういう意味ではありません。

「お客様には最高のサービスをお届けいたしますが・・・」ホテルの支配人は、お客様から贈り物を受け取ってはいけないの。どうやって続けよう・・・?

「でも・・・」彼からの贈り物は困ってしまうんです。

「困る?」彼は私を見た。いえ、どうか誤解しないでください。私はちょっと慌てた。

「私はお客様の事を言っているのではなく、その、贈り物などを・・・」

「ルームサービス?」彼は付け加えた。はい、いいえ、はい・・・。バラは好きですが、ルームサービスは私たちがお客様に対してすることで、逆になってしまうのは・・・。

確かにラスベガスでは、彼は私のお客様ではなかったわ。でも、「僕が客だから困ると言うのなら、他のホテルに移りますが。」と彼は言った。

話が更にややこしくなりそうだわ。

「いいえ、そういう意味で言ったのではありません。」私は正しい言葉を頑張って探した。

たとえビリヤードテーブルによって、彼と私の間に距離があっても、私は彼の熱い視線を感じ取っていた。

「では、どういう意味ですか?」彼は更に聞いた。しまった・・・。

「分かりません・・・。自分でもよく分からないんです。」私は彼の視線から逃げるため、目をそらした。私が分からないのは・・・。私はこの質問から動けなくなり、うつむいた。

彼は続けた。「シン・ドンヒョクが贈った花の名前が、バラなのかユリなのか分からないと言う事ですか?それとも、僕がただのお客なのか、新しい男なのか分からないのですか?」

私は彼の一言一言を受け止めた。

私は彼を見た。こんな質問をされるなんて思っても見なかったわ。それに、こんな率直に落ち着いた感じで・・・。

私はあまりの驚きに、どう対処していいか分からなかった。何て言っていいか・・・。

彼が私に300本のバラを贈って来たのは知ってるけど、これほど魅力的な人からの2番目の質問に、どう答えたら良いの?

「わ、私は・・・」言葉が出てこないわ。どう言う意味なの?これって本当なの?私は彼の言葉に混乱した。それとも、私を試してるの?彼の視線に動揺してるわ。

私は出口に向かって行きたかった。どこか考える場所を探さなきゃ・・・。

私はお辞儀して、「わ、私・・・これで失礼します。バラ、有難うございました。」

「ソ・ジニョン」

はい。私は立ち止まった。

「仕事でもゲームでも、僕は勝てる相手しか選んできませんでした。でも、今回は、結果がどうなるのかわかりません・・・本当にわからないんです。でも結果のことは今はどうでもいい・・・」

私はこの言葉を聞き、振り返り、そして彼の動揺のない視線を感じた。

「・・・もう、始まってしまったから」

私の心臓の鼓動は早まった。息すら出来ないわ。私は小走りにビリヤードルームを出て行った。

私はいつもの屋上へ走って来た。心臓がとっても早く打ってるわ。深呼吸だって私を少しも落ち着かせてはくれない。彼の言葉はまだ頭の中でこだまして、私は耳を塞いだ。

「男なのかが・・・って・・・」どうして彼はあんな事言ったのかしら?私どうしたら良い? 頭をすっきりさせなきゃ。でもすっきりしないわ!どうやって対応したら良いの? あんな素敵な人が、私なんかに興味を持つかしら? でも多分・・・?困ったわ。

彼は私を試してるの?あの言葉は本心なの?

聞きなれた無線の音ですら、私を驚かせた。私はあちらこちらと歩き回った。あなたの声は未だに耳にまとわりついてるわ。

「・・・もう、始まってしまったから」あなたの熱い視線は、今でも頭の中で新鮮に残ってる。あなたは私を見透かしてるみたい。もう、頭が混乱してるわ!あああああ・・・。

私は立ち止まったり、振り返ってまた歩き出したり、そのスピードはスプリンターをいつでも追い越せる物だわ。

あなたが私を好きになる事なんてあるかしら?本当にあの言葉は本心から?

From: Zhen Yin’s Thoughts: “Our game has begun” by Haze
Translator: Milomomo